うつ病と複雑性悲嘆。症状のよく似た双方の区別は難しいのですが、近年ではうつ病とは違う複雑性悲嘆の正体に迫る発見がありました。

アメリカで行われた研究なのですが、親や姉妹を亡くした遺族に亡くなった人の写真を見てもらい、脳のどこが働くのかを探るというものでした。すると、複雑性悲嘆の患者だけ強く働く場所があったのです。

その中で研究者が注目したのは側坐核です。側坐核というのは、様々な欲求が満たされると分かった時に働く場所です。例えば料理を見た時、食欲は満たされるのではと期待して活性化します。

しかしなくなった人の写真を見ても、それ以上の欲求が満たされる事は期待できません。通常ならば側坐核は活性化しないはず。この研究の結果から、複雑性悲嘆は側坐核のシステムが誤作動を起こしたように活性化してしまう状態と考える事ができます。

無くなった事を心が認められないせいで、「戻ってほしい」という欲求が絶えずある為、写真を見ると「また会えるかもしれない」という期待が誤って高まってしまうという解釈です。

期待は残念ながらかなえられません。それが更に戻ってきてほしいという欲求を強め、悲しみから抜け出せないというメカニズムが浮かび上がってきます。これがうつ病との違いとも考えられます。